夏を感じる和歌⑥
雨上がりの日の夜は小さな虫をよく見かけますね。あまりの多さに若干引きつつも、命の隆盛をまざまざと見せつけられました。
今日紹介するのはこの和歌です。
宵のまに 身を投げはつる夏虫は
燃えてや人に 逢ふと聞きけむ
【現代語訳】
夜の間、火の中に身を投げて命が果てた夏虫は、燃えることで愛しい人に逢えると聞いたのだろうか
飛んで火に入る夏の虫を恋しい人へ会うためという意味に昇華した女性らしい和歌です。
作者の伊勢は藤原継蔭の娘です。歌人として有名な中務(なかのつかさ)の母です。
彼女は宇多天皇の弟、仲平と恋に落ちます。その時に詠われた歌です。
結論から言うと、2人の恋は終わってしまいます。
この関係を頭に入れてもう一度、和歌を読み直してたら、会いたいという気持ちが抑えきれずに夜を過ごす姿が目に浮かんでくるでしょう。
読者の方の中にも飛んで火に入る夏の虫になりたいと思う方はいらっしゃいませんか?
身を焦がすほどの思いならばいっそ、燃え尽きてしまえば楽になるかもしれません、というのは私の個人的な意見です。
私は虫があまり好きではないので、見かけたらすぐに殺虫剤をかけてしまいます。この歌を知る前も、そしてこれからもです。